実地でコミュニケーションを鍛えられる

私は、大手総合電機メーカーに就職し、プロジェクト・マネジメントをするための部署に
配属されました。
ここで私のコミュニケーションは鍛えられました。

当時の私のポジション

あるとき、物流会社に納入するシステムを新規開発するプロジェクトに携わっていました。
物流の関連会社で、開発システムの実証実験をすることになったときのことです。

私は、社内だけでなく社外の関係者ともコミュニケーションを取る必要がある役割に就いていました。

そのときの関係先は、

社内

  • 設計部門の課長
  • 製造部門の主任
  • 品質管理部門の課長
  • 現地工事の主任
  • 現地調整の主任
  • それぞれのエース級の担当者

社外

  • 協業してシステムを開発している某大手通信会社のエリート課長様
  • 実証実験に協力してくれる物流会社の現場主任のあんちゃん
  • 人と接するのがイヤでトラック運転手をやっているおやっさん達

といった顔ぶれでした。

  • 立場も違う
  • 使う言葉(専門用語、業界用語)も違う
  • 習慣や文化も違う
  • 何もかもが違う

企業、バックグラウンドの人たちの集まりです。

このようなメンバーとコミュニケーションを取りながら、その人たちに動いてもらって、
システムを作ったり、運用試験をしたりしてもらう役回りだったのです。

会社も組織も違うので、指揮・命令系統で動かせる間柄ではありません。
信頼関係、人間関係を作って、お願いベースでプロジェクトを進めていかないといけないワケです。

さらには、現場でプロジェクトを進捗させる役割の私は一担当(つまり平社員)、かつ、
(なんと!)その現場では最年少だったのです。

現場の洗礼

実証実験中、物流会社の物流倉庫の一角にプレハブ小屋が用意されました。
大型トラックが行き交う、駐車場の片隅です。
私たち開発チームは、その小屋の中で作業をしていました。

最初はスーツで現場に入っていました。
私の普段の仕事着です。

私のスーツ姿を、トラック運転手のおやっさん達は身構えて、遠巻きに、煙たそうに、
見ている感じがしていました。

数日後、おやっさん達を束ねる、物流会社の現場主任のあんちゃんから教えてもらったのですが、

「おやっさん達からすると、あなたは『スーツ族の人』扱いになっている。」
(刑事ドラマで、所轄の刑事が本庁の人を煙たがっているような感じと言えば、
分かっていただけるでしょうか。)

ということでした。

私は、おやっさん達に、開発しているシステムの機器の操作をしてもらうよう
お願いしなければいけなかったのです。

「これではまずい。」

ということで、翌日から作業着を来て現場に入り、おやっさん達に声を掛けるようにしました。
作業着を来ている私は、ようやくおやっさん達に「仲間」として認識してもらえたのです。

その後、ある人は毎朝わざわざプレハブ小屋に入ってきてまで挨拶をしてくれるようになり、
またある人は、缶コーヒーを差し入れしてくれるようになる。
というほど親しくしてもらえるようになりました。

コミュニケーションについて学んでいる今であれば、
ラポール*を築くためには、会話の内容や態度だけでなく、服装も大きな役割を果たすこと
を理解しています。

しかし、当時は試行錯誤の毎日だったのです。

*ラポール
開かれたコミュニケーションが取れる関係性

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